獏のおくりもの 27
頭をかかえる宇宙人
青みがかったまるい地球を
眼下にとおく見下ろしながら
火星か月にでも住んで
宇宙をいきることになったとしてもだ
いつまで経っても文なしの
胃袋付の宇宙人なのでは
いまに木戸からまた首がのぞいて
米屋なんです と来る筈なのだ
すると女房がまたあわてて
お米なんだがどうします と来る筈なのだ
するとぼくはまたぼくなので
どうしますもなにも
配給じゃないか と出る筈なのだ
すると女房がまた角を出し
配給じゃないかもなにもかもあるものか
いつまで経っても意気地なしの
文なしじゃないか と来る筈なのだ
そこでぼくがついまた
かっとなって女房をにらんだとしてもだ
地球の上での繰り返しなので
月の上にいたって頭をかかえるしかない筈なのだ
『鮪に鰯』(一九六四年)
月
はじめて会ったその人がだ
一杯をのみほして
首をかしげて言った
あなたが詩人の獏さんですか
これはまったくおどろいた
詩から受ける感じの獏さんとは
似てもつかない紳士じゃないですかと言った
ぼくはおもわず首をすくめたのだが
すぐに首を伸ばして言った
詩から受ける感じのぼろ獏と
紳士にみえるこの獏と
どちらがほんものの獏なんでしょうかと言った
するとその人は首を起して
さあそれはと口を開いたのだが
首に故障のある人なのか
またその首をかしげるのだ
『鮪に鰯』
島
おねすとじょんだの
みさいるだのが
そこに寄って
宙に口を向けているのだ
極東に不安のつづいている限りを
そうしているのだ
とその飼い主は云うのだが
『鮪に鰯』
~2003年6月9日(月) 沖縄タイムスより~
三つ目の詩の一行目
「おねすとじょんだの」の意味が・・
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